アデノウイルス型COVID-19ワクチンで起きる稀な血栓症、免疫の「変異」が原因と特定

国際研究チームは、アデノウイルスベクター型COVID-19ワクチンや自然のアデノウイルス感染後に稀に起きる重篤な血栓症(VITT)について、原因となる抗体の特定変異(K31E)を同定した。pVIIに対する免疫応答中に偶発的に生じた変異がPF4への交差反応を生み、血小板活性化と異常凝固を引き起こす可能性が示された。

国際研究チーム(カナダのMcMaster University、オーストラリアのFlinders University、ドイツのUniversitätsmedizin Greifswald)は、特定のCOVID-19ワクチン接種後、あるいは自然のアデノウイルス感染後に、ごく少数の人で重篤な血栓が生じた理由を特定した。New England Journal of Medicineに掲載された同研究は、免疫系がまれに誤って別の分子を標的としてしまう、想定外の「取り違え」が関与することを示している。

本研究は、体内がときに自分自身の血液タンパク質を攻撃する有害な抗体を産生し、ワクチン誘発性免疫性血小板減少症・血栓症(VITT)を引き起こし得る仕組みを説明している。研究者らは、異例の条件下でこの反応を誘発し得るウイルス成分を特定した。

VITTは、欧州とオーストラリアでOxford-AstraZenecaのCOVID-19ワクチン、また米国でJohnson & Johnsonのワクチンを接種した後、およそ20万人に1人の割合で発生した。VITTがアデノウイルスベクター(adenovirus-based)ワクチンと関連づけられた後、多くの欧州諸国はAstraZenecaワクチンの使用を制限するか、完全に中止し、米国はJ&Jワクチンの使用を取りやめた。ModernaやPfizer/BioNTechなどのmRNAベースのCOVID-19ワクチンは米国でより一般的に使用され、他の多くの国でも異なるブランド名で広く用いられた。

VITTは、静脈または動脈に危険な血栓が形成される血栓症(thrombosis)を特徴とし、脳や腹部で起こることが多い。これに免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia)が伴い、血液中の血小板が自己免疫性に減少することで、制御不能な出血につながる。症状としては、激しい頭痛、視覚の変化、腹痛・背部痛、嘔吐、息切れ、あざができやすい/出血しやすい、脚の痛みや腫れなどが含まれる。

研究者らは、VITTはワクチン接種または自然感染を通じたアデノウイルスへの反復曝露後に発症し得るものの、特定の抗体遺伝子の遺伝的バリアント(IGLV3-2102または03)を保有する人に限られることを明らかにした。この遺伝子バリアントは人口の最大60%に存在するため、それだけでは合併症が極めて稀である理由を説明できない。

この過程は、免疫系が**protein VII (pVII)として知られるアデノウイルス蛋白に反応することから始まる。このウイルス蛋白は、ヒトの血液タンパク質であるplatelet factor 4 (PF4)**の一部とよく似ている。極めて稀なケースでは、免疫系がpVIIに対する抗体を産生している最中に、抗体産生細胞の1つで単一の変異が生じることがある。

この変異(K31E)は、正に帯電したアミノ酸を負に帯電したアミノ酸へ置き換える。変化はたった1つの構成要素に過ぎないが、抗体の標的をpVIIからPF4へと向け直すには十分である。変化した抗体がPF4に結合すると血小板が活性化し、VITTに特徴的な異常凝固と血小板数低下を引き起こす。

重要な点として、研究者らは解析したすべてのVITT患者抗体に同じK31E変異を見いだした。さらに、この変異を実験室で作製した抗体で元に戻すと、有害な凝固活性は消失した。これにより、同変異が病態成立に必須であることが確認された。

この機序を解明するため、チームは高度な実験手法を用いた。VITT患者の抗体配列を決定し、質量分析で構造を解析し、抗体がどのように変化して振る舞うかを観察するために改変抗体を作製した。結果はヒト化マウスモデルでも検証された。これらの実験では、VITT関連変異を持つ抗体は凝固を引き起こした一方、「バック変異(back-mutated)」抗体では起こらなかった。

また、通常の免疫防御が有害な反応へと転じる仕組みを示す、これまで知られていなかった生物学的経路も記述した。この知見は、感染症、薬剤、または環境曝露に関連する、他の稀な抗体駆動性副作用の理解にも役立つ可能性がある。

本発見は、VITTに関する5つの長年の疑問に答えるものである。すなわち、アデノウイルスベクターワクチンと自然のアデノウイルス感染がなぜ引き金となり得るのか;なぜPF4が標的となるのか(pVIIとPF4の模倣);なぜVITTが極めて稀なのか(素因のある人に偶発的な特定変異が必要);なぜ集団によって発生率が異なるのか(関与する抗体遺伝子が欧州系祖先の人々でより一般的);そして、なぜ多くの症例が初回接種後に起きたのか(低い基礎抗体レベルから、既存の抗pVII免疫がブーストされることに由来)である。

同様に重要なのは、この発見が、アデノウイルスワクチン技術が持つ世界的な利点を損なうことなく、さらに安全なワクチンを設計するための実践的なロードマップを提供する点である。すなわち、将来のアデノウイルスワクチンは、特定のウイルス成分を再設計することで、VITTを引き起こす稀な免疫の誤作動を回避しつつ、その利点を保てる可能性がある。

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References

  1. Scientists Finally Solve the Mystery Behind Rare COVID Vaccine Blood Clots - SciTechDaily · scitechdaily.com
  2. Researchers pinpoint cause of rare but life-threatening blood clots after adenovirus-based ... · www.cidrap.umn.edu
  3. Study uncovers immune trigger behind vaccine-induced immune thrombocytopenia and thrombosis · www.news-medical.net