がん細胞の染色体粉砕(クロモスリプシス)を引き起こす酵素「N4BP2」を特定
がん細胞で染色体がバラバラに粉砕される現象「クロモスリプシス」の実行犯が酵素N4BP2であることが判明した。この酵素の働きを抑えることで、がんの急激な進化や治療耐性の獲得を阻止できる可能性があり、難治性がん治療の新しい標的として注目されている。
カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究チームは、がんの約4分の1で見られる劇的な遺伝子異常「クロモスリプシス(chromothripsis:染色体粉砕)」を引き起こす鍵となる酵素「N4BP2」を特定した。
クロモスリプシスとは、1本の染色体が数百もの断片に粉砕され、それがランダムに繋ぎ合わされる現象で、短期間に多数の遺伝子変異を生じさせる。これにより、腫瘍は急速に進化し、従来の治療に対する耐性を獲得する。これまでこの現象の存在は知られていたが、何がトリガーとなって染色体をバラバラにするのかは不明だった。
研究によると、エラーにより細胞核とは別の小さな袋(小核)に閉じ込められた染色体にN4BP2が侵入し、内部のDNAを切断することが判明した。脳腫瘍細胞からこの酵素を除去すると染色体の粉砕が劇的に抑えられ、逆に健康な細胞核に強制的に注入すると染色体が粉砕された。この発見は、悪性度の高いがんに対する新たな治療戦略や、がん遺伝子を運ぶ「染色体外DNA(ecDNA)」の形成阻止に繋がる可能性がある。