アルツハイマー病研究、未開拓経路を狙う新アプローチが浮上

アルツハイマー病(AD)の治療標的探索は、従来の「よく知られた生物学」から、データ駆動型の未開拓経路へと広がりつつある。TREAT-ADの解析では臨床試験標的との重なりが限定的で、TREM2アゴニストや代謝介入、マルチオミクス統合による新たな標的・バイオマーカー候補が示された。

十分な投資が行われているにもかかわらず、アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)の治療薬開発は、有効な介入へ向けた進展が依然として限定的である。Target Enablement to Accelerate Therapy Development for Alzheimer's Disease(TREAT-AD)コンソーシアムは、数千例のヒト脳をプロファイリングした大規模研究から得られたシステムレベルのデータを統合し、疾患リスクを離散的な生物学的ドメインに分割する標的特異的リスクスコアを作成した。同コンソーシアムは、臨床試験(clinical trial)で狙われている標的と、TREAT-ADで上位にランク付けされた標的を比較し、重なりが限定的であること、ならびに各集合が強調する生物学に差があることを見いだした。

現在のAD治療薬開発の状況は、よく知られた生物学という「街灯」の下に大きく留まっている。一方で、バイアスの少ない疾患リスク指標は、比較的未開拓のまま残っている他の疾患関連プロセスを示唆している。リスク関連標的は、ミトコンドリア、脂質、その他の経路を特異的に含意する。ADの臨床試験は依然として十分に特徴づけられた生物学に焦点が当たっており、AD治療戦略を多様化するには「暗い」標的を前進させることが重要である。

TREM2は、ADの潜在的標的として大きな注目を集めている。この受容体はミクログリア上で複数の役割を担い、多数の内因性リガンドがさまざまなシグナル伝達経路と細胞プロセスを誘導する。これにはADの古典的病理に関与するものも含まれる。TREM2は中枢神経系(CNS)で主にミクログリアに発現する膜貫通型受容体であり、そのリガンドには、多陰性リポタンパク質の多様な一群が含まれる。これらはAβの貪食など、多彩な機能を媒介する。

ADの主要な2つの病理である細胞外Aβプラークの蓄積と、細胞内過リン酸化タウ(tau)凝集体の形成は、いずれもTREM2機能の影響を受ける。ADの病態形成において重要なのは、TREM2がAβオリゴマーを認識して結合し、これら有害な高分子の貪食を促進する能力である。AD患者の脳脊髄液(CSF)中のsTREM2濃度は健常成人に比べて上昇しており、CSF中sTREM2濃度をAD進行の代替バイオマーカーとして実装できる可能性が仮説として提唱されている。

TREM2に作動性(アゴニスト)を示す抗体のいくつかはADを対象にヒト試験へ進んだが、これまでのところ臨床で有効性を示したものはない。臨床に入った初のTREM2低分子アゴニストであるVG-3927は、2025年に第1相試験(Phase 1)を成功裏に完了し、同年に行われたSanofiによるVigil Neuroscienceの4億7000万ドル買収の中核となった。低分子TREM2アゴニストをめぐる特許活動は増加傾向にあり、大企業から小規模企業まで、Vigilのアーキテクチャに並行する骨格で出願を行っている。

早期ADの多因子性に関する研究では、アミロイド病理が出現する前に高い精度で疾患を検出できる脳脊髄液タンパク質12種の群が見いだされた。これらのタンパク質は主として免疫機能に関与し、さらにドーパミン生合成、リソソーム活性、脂質輸送に関連するプロセスにも関わることが示され、早期検出および治療介入に向けた興味深い新規標的を示唆している。

認知症に関する別のプロテオミクス(proteomics)研究では、予測上重要な5つのタンパク質が同定された。エンリッチメント解析は、それらが免疫系経路、がん関連プロセス、インスリンシグナル伝達に関与することを示し、認知症の複雑な生物学的基盤に関する洞察を提供するとともに、プロテオミクスが新規機序を見いだし治療戦略に情報を与え得ることを示した。

従来の心血管リスク因子が認知機能障害および認知症の可能性を高めるというエビデンスが蓄積する中、新たなメタ解析では、心血管健康に関連する多様な血漿タンパク質が認知特性とどのように関連するかが検討された。その結果、心血管疾患(CVD)と、認知予備能または認知低下との間に類似した関連が同定され、CVD関連の遺伝的リスクを低減するための治療標的となり得る可能性が示された。

第2相の臨床実験により、ADの多因子性の病因に関する追加の洞察が得られ、代謝アンバランスに対処することで認知パフォーマンスが改善することが示された。これは、混合代謝活性化剤(CMA)がミトコンドリア脂肪酸酸化を増加させ、酸化ストレスを低下させることを示した前臨床研究を発展させるものであり、その治療可能性を示している。

パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)に関する新たな大規模プロテオミクス研究では、血液ベースの脂質バイオマーカーが診断の最大15年前から調節異常を示し、一貫した低下と前駆症状および脳異常との関連が認められた。これらの所見は、脂質代謝が早期検出の潜在的標的であることを示している。PDの診断指標候補に関する別の研究では、特に認知障害のある患者で炎症マーカーの上昇が見られ、時間経過とともに自然免疫の活性化へシフトすることが示唆された。

同様のPD試験では、CMA治療により運動症状に変化がないにもかかわらず、認知面での改善と代謝指標の好ましい変化が得られた。プロテオミクスおよびメタボロミクス(metabolomics)の結果は、CMAが脳のエネルギー代謝と神経機能を改善したことを示した。シナプス形成、炎症、膜輸送、DNA修復、ならびに酸化損傷とタンパク質凝集からの保護がいずれも影響を受けた。

ある研究では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む神経変性疾患の進行に、いくつかの炎症性タンパク質が寄与し得ることが見いだされた。さらなる検討により、ALSが他の免疫関連タンパク質のレベルも変化させ得ることが示され、炎症と疾患の相互作用が双方向性である可能性が示唆された。これらの所見は、ALSにおける複雑な炎症プロセスと潜在的治療標的を浮き彫りにしている。

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References

  1. Decoding complex neurodegenerative diseases with multiplex biomarker platforms · news-medical.net
  2. Beyond the streetlight: a TREAT-AD perspective on where to find new Alzheimer's targets · pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  3. Will TREM2 Agonists Be the Next Paradigm Shift in Treating Neurodegenerative Disease? · drughunter.com