CAR T細胞制御の進展:二重受容体ノックアウトと薬剤制御スイッチ

研究者らは、CAR T細胞療法の有効性と安全性を高める複数の工学的アプローチを提示した。固形腫瘍に対するPGE2二重受容体ノックアウトに加え、venetoclaxやカフェイン、rapamycin系の化学誘導性近接システムを用いたスイッチにより、治療活性やCRISPR機能の精密制御が可能になることを示した。

研究者らは、固形腫瘍に対する二重受容体ノックアウト戦略と、治療活性を精密に制御する薬剤制御スイッチを含む、CAR T細胞療法の有効性と安全性を高める複数のエンジニアリング戦略を明らかにした。

固形腫瘍治療における画期的な進展として、研究者らは、改変免疫細胞そのものにおいてprostaglandin E2PGE2)シグナル伝達を、その二重受容体をノックアウトすることで精密に遺伝学的に欠失させ、CAR T細胞療法の効力を劇的に高める戦略を開発した。CAR T細胞療法は一部の血液がん治療を一変させてきた一方で、固形腫瘍への応用は、腫瘍が作り出す過酷で免疫抑制的な微小環境のために大きな課題に直面してきた。腫瘍環境に多く存在する生理活性脂質メディエーターであるPGE2は、免疫細胞上の受容体に結合することで免疫応答を減衰させ、CAR T細胞の抗腫瘍活性を事実上鈍らせる中心的役割を担う。

二重受容体ノックアウトは、CAR T細胞ゲノム内で受容体欠失の正確性と持続性の両方を確保する最先端の遺伝子編集ツールを用いて設計された。この精密な遺伝子編集の後、改変CAR T細胞がPGE2媒介性シグナル伝達から解放されているだけでなく、重要な細胞傷害機能と増殖能を保持していることを確認するため、厳格な機能アッセイが実施された。再プログラムされた免疫細胞は、腫瘍微小環境に典型的に存在する免疫抑制因子に対して顕著な抵抗性を示した。

難治性として知られる固形腫瘍の前臨床モデルにおいて、改変CAR T細胞は腫瘍塊へ浸潤する能力が大幅に向上し、長期間にわたり抗がん活性を維持することが示された。これは腫瘍進行の著明な遅延へとつながり、場合によっては完全退縮に至った。これらは従来のCAR T療法ではめったに見られない効果である。有効性の改善に加え、これらの受容体欠失CAR T細胞は、細胞免疫療法で一般的な合併症である全身性炎症性副作用の予想外の減少も示した。

本戦略は、腫瘍生物学および免疫回避におけるPGE2の多面的役割に関する広範な理解から導かれている。2つの異なる受容体を無効化することで、単一受容体標的介入では回避され得るPGE2の免疫抑制シグナルを、より包括的に遮断できることがこのアプローチの狙いである。詳細な表現型解析により、二重受容体ノックアウトは、正常なT細胞機能および移動に必要な必須受容体シグナル伝達経路を損なわず、in vivoにおける治療細胞の適応性とレジリエンスを維持することが示された。

さらに詳細な分子プロファイリングにより、PGE2受容体の無効化がCAR T細胞トランスクリプトームを、エフェクター分子の上方制御と、CAR Tの有効性をしばしば制限する慢性機能不全状態である疲弊への抵抗性を特徴とする、より活性化され持続的な状態へと再調整することが明らかになった。

並行する進展として、研究者らは、ヒト由来のタンパク質間相互作用を合理的設計とライブラリベース最適化で組み合わせ、venetoclaxで制御可能な薬剤制御オフスイッチPPI(DROP)-CARを開発した。キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、標的抗原が腫瘍以外の正常組織にも存在することによる毒性(on-target, off-tumor toxicity)や、慢性的な抗原曝露による細胞疲弊によって制約を受ける。DROP-CARは、腫瘍標的scFvを用量依存的に放出し、その結果としてT細胞の腫瘍細胞への結合を減少させる。

現在臨床で用いられるCARの多くは第2世代(2G)であり、抗原結合部位(通常は単鎖可変断片であるsingle-chain variable fragment, scFv)が、ヒンジ、膜貫通領域、1つの共刺激受容体とCD3ζの細胞内ドメインに融合されて構成される。2G-CARの限界には、慢性的な抗原曝露が改変T細胞を疲弊させ得ること、健常組織に対する標的反応性(on-target反応性)により毒性が生じ得ること、高い抗原密度や腫瘍負荷での過剰反応性がサイトカイン放出症候群(CRS)などの有害事象を誘発し得ることが含まれる。

小分子投与によってT細胞活性レベルを遠隔制御できるオンスイッチ/オフスイッチCAR設計は、機能と安全性の均衡を図る有望な戦略である。分野では著しい進歩があったものの、ヒト由来ドメイン(すなわち免疫原性を最小化するため)に基づき、臨床承認された小分子に応答するスイッチ設計は稀であり、既存のものには限界がある。

venetoclax制御DROP-CARシステムは、合理的なタンパク質設計とライブラリスクリーニングにより、臨床承認分子であるvenetoclaxによって効率的に解離可能な、ヒト由来の安定したタンパク質間相互作用を作り出すことで開発された。研究者らは、異なる小分子によって制御されるデュアルDROP-CARの概念実証に加え、STAT3シグナル伝達を可能にするロジックゲート型合成受容体の概念実証も提示した。さらに、DROP-CAR T細胞のin vitroおよびin vivoでの機能を実証した。

Texas A&M Universityの研究者らは、遺伝子発現制御のための2つの新しい化学誘導性近接(CIP)システムを開発した。チームは、がん特異的シグナル伝達経路を改変でき、未発表研究ではCRISPR機構を調節できるカフェイン誘導性システムを開発した。もう1つは、改変rapamycin CIPで、CRISPR活性化(CRISPRa)をオフにしてオフターゲット効果の可能性を低減することを目的とする。

CHASERと名付けられたカフェイン制御システムは、「COSMO」と呼ばれる既存のCIPシステムをナノボディLaM8に挿入し、カフェインに対してアロステリックに応答できるようにすることで作製された。CHASERプラットフォームを用いて、チームは細胞培養でカフェインによりチロシン受容体キナーゼ(TRKs)の発現を誘導し、変化させることに成功した。TRKsは細胞シグナル伝達や腫瘍増殖、転移に関与する必須の膜貫通タンパク質である。

チームはCRISPRを2つの別個の断片に分割し、それぞれをカフェイン応答モジュールに結合できる。カフェインを加えると2つの部分が再び結合して完全なCRISPRシステムを再構築し、オンになる。CRISPRはカフェイン存在下でのみ活性化されるため、遺伝子編集をオン/オフするシンプルで制御しやすい方法が得られる。論文では、細胞培養において希釈した茶、コーヒー、Red Bullを用いてCHASER媒介性の遺伝子活性化を誘導したことも報告されている。

チームはまた、UniRapRと呼ばれるrapamycin誘導性CIPを、LaM8ナノボディに基づく遺伝学的「オフ」スイッチであるRASERへと変換し、再プログラムした。CHASERが2つのタンパク質のより緊密なコンフォメーションを誘導するのに対し、RASERは2つのドメインを結び付けることでタンパク質間相互作用を破綻させるように作用する。チームは蛍光を指標としてin vitroで幅広いRASERナノボディ候補をスクリーニングし、細胞モデルでGFP発現がほぼ70%低下する特定の設計に絞り込んだ。

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References

  1. Dual Receptor Knockout Boosts CAR T Solid Tumor Therapy - BIOENGINEER.ORG · bioengineer.org
  2. Drug-controlled CAR T cells through the regulation of cell – cell interactions | Nature Chemical Biology · nature.com
  3. Thanks a latte: Using caffeine as an on switch for CRISPR - BioXconomy · bioxconomy.com