ラボで育成した脊髄モデルが損傷を再現、「ダンシング・モレキュール」療法の試験に成功
ノースウェスタン大学がヒト脊髄オルガノイドによる損傷モデルを開発し、画期的な再生医療「ダンシング・モレキュール」療法の有効性をヒト組織レベルで実証した。この療法は瘢痕組織を減少させ、神経突起の再生を促進することが確認された。
ノースウェスタン大学の研究チームは、ヒトの脊髄オルガノイドを用いて、実際の脊髄損傷で起こる細胞死、炎症、および神経再生を阻害するグリア瘢痕(はんこん)などの反応を正確に再現する革新的なモデルを開発した。このモデルは、再生療法の開発を加速させる可能性を秘めている。
研究チームはこの損傷モデルを用い、「ダンシング・モレキュール(躍る分子)」と呼ばれる治療法の試験を行った。この療法は、液体として注入されると細胞周囲の足場を模倣したナノファイバーのネットワークへと変化し、分子の「動き」によって細胞受容体と高頻度で相互作用する。治療を施したオルガノイドでは、グリア瘢痕が大幅に縮小し、神経細胞を接続する「神経突起」の著しい伸長が確認された。
本研究の画期的な点は、ヒト脊髄オルガノイドに免疫細胞であるミクログリアを初めて導入したことである。これにより、炎症反応を含めたよりリアルな損傷プロセスのシミュレーションが可能となった。この治療法はすでにFDA(米国食品医薬品局)から希少用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けており、今回のヒト組織モデルでの成功は、臨床試験に向けた重要なステップとなる。
研究チームは今後、より強固な瘢痕組織を伴う慢性損傷モデルの開発や、患者自身の幹細胞を用いた拒絶反応のない個別化インプラントの実用化を目指している。